そう問いかけると、まつもとゆきひろ氏の答えは明快でした。
「コードを書くこと」と「創る楽しさ」は、同じではありません。
Rubyが大切にしてきた「Programmer Happiness(プログラマーの幸福)」という考え方は、AI時代だからこそ、改めて意味を持ち始めているのかもしれません。
>> 第1回の記事は以下からご覧いただけます。
AIは「新人」から「開発パートナー」へ。AI時代、人間の役割はどこに残るのか
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コードを書く時代から、「何を作るか」を考える時代へ。AI時代の若手エンジニア論
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次のRubyは生まれるのか。AI時代、新しいプログラミング言語の可能性
「コードを書くこと」が好きなら、それはこれからも続けられる
AIが実装を担うようになると、「コードを書く楽しさ」は失われてしまうのでしょうか。
まつもと氏は、そうは考えていません。
仕事として求められる役割は変わるかもしれません。
AIがコードを書くことで、エンジニアはより上流の仕事や、価値を考える仕事へ移っていくでしょう。
しかし、それは「コードを書くことがなくなる」という意味ではありません。
プログラミングが好きなら、個人開発やオープンソース活動を通して、自分自身でコードを書き続けることはできます。
仕事ではAIを活用しながら価値を生み出し、趣味では自分で実装を楽しむ。
そんな新しい付き合い方も自然になっていくのではないかと語ります。
仕事と趣味、その境界はこれまで以上に柔らかくなっていくのかもしれません。
地方からでも、世界へ挑戦できる時代
「境界が柔らかくなっている」……この話は、地方と都会での働き方にも通じます。
まつもと氏自身、島根県を拠点に活動を続けながら、Rubyという世界中で利用されるプログラミング言語を生み出しました。
現在はオンラインで世界中の開発者と議論し、オープンソースコミュニティを通じて知識を共有することが当たり前になっています。
場所は、以前ほど大きな制約ではありません。
もちろん、人と直接会う価値はあります。
しかし、地方だから世界へ挑戦できない時代ではなくなりました。
むしろ、自分らしい暮らしを大切にしながら、世界中の開発者とつながれる時代になったと言えるでしょう。
「もっと良くできる」と思える人が、未来を創る

今回のインタビューを通して、まつもと氏は何度も「創造性」という言葉につながる話をしていました。
AIはコードを書けます。
既にあるものを再現することも得意です。
しかし、
「もっと良くできる。」
「こんなものがあったら面白い。」
そう考えることは、人間の役割です。
目の前のサービスや仕組みに違和感を持ち、
「自分ならもっと便利にできる。」
と思えること。
その小さな気付きが、新しいソフトウェアを生み出します。
そして、それこそがエンジニアという仕事の面白さなのだと、まつもと氏は語っていました。
AI時代、それでもエンジニアは面白い。
「AIによってエンジニアの仕事はなくなる。」
そんな言葉を耳にする機会は増えました。
しかし今回のインタビューで印象に残ったのは、まつもと氏が終始、「仕事がなくなる」という話ではなく、「仕事が変わる」という話をしていたことです。
コードを書くことから、
価値を考えることへ。
実装することから、
創造することへ。
AIが担う領域が広がるほど、人間はより人間らしい仕事に集中できるようになる。
そう考えると、AIはエンジニアのライバルではなく、創造性を引き出すパートナーとも言えるのかもしれません。
Rubyが誕生した背景には、「プログラマーが幸せになれる言語を作りたい」という思いがありました。
その思想は、生成AIが当たり前になりつつある今も変わりません。
むしろ、AI時代だからこそ、エンジニアは「何を作るか」「誰のために作るか」を考える、本来の面白さを取り戻せるのではないでしょうか。
地方で働く人も、都市で働く人も、その可能性は変わりません。
創造することを楽しみ、人とつながり、新しい価値を生み出していく。
AI時代、それでもエンジニアは面白い。
今回のインタビューは、そのことを改めて教えてくれました。
おわりに
本特集では、AI時代におけるエンジニアの役割や、ソフトウェア開発の未来について、Ruby開発者・まつもとゆきひろ氏にお話を伺いました。
生成AIは、これからも進化を続けるでしょう。
だからこそ、その技術を使って「何を創るのか」を考える人の価値は、これからますます大きくなっていくはずです。
地方からでも世界へ挑戦できる時代だからこそ、自分らしい場所で、自分らしいものづくりを楽しんでほしい――そんなメッセージが、このインタビューには込められていました。
