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Ruby開発者・まつもとゆきひろ氏が語る、これからのエンジニア論

AIは「新人」から「開発パートナー」へ。AI時代、人間の役割はどこに残るのか

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生成AIの進化は、IT業界にこれまでにない変化をもたらしています。コードを書くことはAIが担い、人間はより創造的な仕事へ――そんな未来像も語られるようになりました。
では、AI時代にエンジニアはどのような価値を発揮していけばよいのでしょうか。
今回はRuby開発者・まつもとゆきひろ氏(Matz)に、AIがソフトウェア開発にもたらす変化と、人間にしかできない役割について伺いました。

AIは「ものすごく勉強した新人」から、「対等なメンバー」へ

2019年にIT WORKS@島根でインタビューを行った当時、生成AI(LLM)はまだ普及していませんでした。それがここ数年で、ソフトウェア開発の現場は大きく変わりました。
昨年、まつもと氏は生成AIを「ものすごく勉強した新人」と表現していました。
しかし、その認識も、この一年でさらに変化したといいます。

昨年はAIを「ものすごく勉強した新人」と表現されていました。現在はどのように感じていますか。

「今はもう、新人ではありませんね。」
そう話すまつもと氏は、現在のAIを「対等な開発メンバー」に近い存在だと表現します。
以前は、人間が細かな手順まで指示を出し、一つひとつ確認しながら開発を進める必要がありました。
しかし現在では、人間が決めるべきことは大きく二つになったと言います。

一つは、
「何を作るのか」

もう一つは、
「完成したものが本当に価値を持つのか」
という判断です。

そこさえ人間が担えば、コードを書く工程の多くはAIに任せられるレベルになってきています。

「コードを書くことについては、概ね任せてもいいと思えるくらいにはなっています。」

もちろん、AIにもまだ課題はあり、時折、自分で限界を決めてしまい、「ここまでしかできません」と止まってしまうことがあり、

「もっとできるでしょう。」
「別の方法はありませんか。」

と背中を押してあげると、再び考え始めることも少なくないそうです。

「本当はできるのに、自分で止めてしまうことがあるんです。だから時々、『いや、できるよ』と言ってあげる必要があります。」(まつもと氏)

今現在、そういう側面はありつつも、AIは急速に成長しています。
だからこそ、まつもと氏は未来予測そのものをやめたと言います。

「ここまで進化するとは予想できませんでした。もう未来を予測するより、その時々の現実を見るしかないですね。」(まつもと氏)

AIは、もはや「優秀な新人」ですらありません。
人間と並んで開発を進めるパートナーへと変わりつつあります。


AIが進化しても、「人間が決めること」は残る

では、AIがコードを書くようになった未来でも、人間にしかできない仕事は残るのでしょうか。

まつもと氏は、「はい」と断言します。

理由は二つあります。

一つ目は、
ソフトウェアは人間のために存在する
ということです。

AIは膨大なデータから、
「多くの人はこういうUIを使いやすいと言っている」
ということは学べます。

しかし、
「自分が使って便利だった。」
「この体験は楽しかった。」
とは感じません。

AIには、お腹が空くことも、疲れることも、退屈することもありません。

だから、
「もっと楽をしたい。」
「こうだったら便利なのに。」
という、人間がソフトウェアを生み出してきた根源的な欲求を持っていないのです。

「人間の社会をもっと良くするにはどんなソフトウェアが必要なのか。そういう価値判断は、人間がやらなければいけないと思っています。」(まつもと氏)

AIは「便利だと言われているもの」は理解できますが、「便利だ」と実感することはありません。この違いは、AIがさらに進化したとしても、簡単には埋まらないだろうとまつもと氏は考えています。

最後に責任を負うのは、人間である


もう一つ、人間に残る役割があります。

それは、
責任を負うことです。

まつもと氏は、企業のシステム障害を例に挙げます。

大規模な障害が起きると、企業の責任者が記者会見を開き、利用者に謝罪します。
もしその場に現れるのがAIだったらどうでしょうか。

CGで生成されたAIが頭を下げても、多くの人は「責任を取った」とは感じないはずです。

それは技術の問題ではなく、人間社会の価値観の問題です。

社会は今も、
「誰が判断したのか。」
「誰が責任を負うのか。」
を人間に求めています。

もちろん、AIと共に育った世代が社会の中心になれば、その価値観は変わるかもしれません。

しかし少なくとも当面は、
最終的な意思決定と責任は、人間が担い続けるだろうと、まつもと氏は考えています。

AIがコードを書くようになると、若手エンジニアは何を学べばよいのでしょうか。
次回は、「コードを書く時代」から「何を作るかを考える時代」へ――AI時代のキャリア論について、まつもと氏の考えを伺います。

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